(前回からの続きです。前回から通してお読みください。)
特許出願書類が知的財産庁からインターネットなどで公開されるまで「18月」かかります。今回は「18月」にまつわる話を紹介しましょう。
この「18月」はそれぞれの国の特許法に定められた期間です。国際的取り決めのニュアンスとしては、知的財産庁は遅くともこの期間内には公開しましょう、というような感じです。架空の話ですが、この間に日本でライバル企業が開発したAIが、ソフトバンクの2023年9月のある出願と同じ可能性もあります。もし、「9月」のある出願が特許になった場合には、ライバル企業はソフトバンクの特許権を侵害することになります。この様子を、急に浮上して海上に姿を見せ、それまで平和に漂う船を怯えさせる様に例えて「サブマリン特許」と呼ばれた時期があります。この言葉は1990年ごろ米国の特許制度の欠陥としてクローズアップされた頃によく聞きました(日米構造協議)。当時は、米国の特許制度には18月公開制度がなかったため、例えば、出願人しか知らない発明が、ある場合は意図的に数年間にわたり、潜伏できたのです。もし、18月公開制度があれば、それを知った18月の時点で他の企業は、早めに事業変更、設計の変更ができたかもしれません。
今日では米国も、特許になるまで秘密状態にする制度から「18月公開制度」に改正したので、この米国特有の問題は「解決」されました。
でも、潜伏期間の長短は異なるものの同じ問題が依然として残っていまして、新たな「18月」潜伏の「サブマリン特許出願」のデメリットは存在すると考えています。現在の世界の特許制度では18月潜伏の「サブマリン特許出願」は許容され、私たちはこれに慣れすぎて疑問に感じなくなっているのではないでしょうか。技術開発スピードが昔と今日では様変わりしています。AI、情報技術のような分野では、加速がついている開発速度を考慮するとそれに比例して日に日に「18月サブマリン特許出願」はデメリットが大きくなり、スポットライトを当てる時期が近づいているのではないかと思います。
この問題の源流をたどっていくと、もうひとつ慣れすぎた「18月」の由来、根拠についてです。これも古き良き時代のグーテンベルグの印刷機、蒸気船が基になっているのでは思います。この解説は後日説明します。
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